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出会いの美女(パキスタン)

■パキスタン
パキスタンを旅すると大人の女性はあまり目にしない。宗教上の理由で外ではベールを被り顔を隠している。またほとんど家の中に隠っている。私は最初そんなこととは知らず、女性のスナップをしようとしたとき回りから怒鳴られたことがあった。
マルクワル発クシャブ行きのSPS牽引きの普通列車が、リラ郊外の鉄橋通過を撮っていると突然止ってしまった。機関車故障だった。乗客らは列車からに降りて出発を待っていた。鉄橋上で止ったものだから絵にならず私は次のポイントに移動しようとしたその時一人の女の子が近寄って来た。
パンジャブ州 リラターン近郊  ヌール・アショック(仮名) 17歳 高校生
その娘の名前はヌール、高校生でなんと素顔である。流暢な英語で話しかけてはくるものの私も返す言葉に困った。大学を卒業したら海外に携わる仕事がしたいと言う。外国人と話がしたいヌールは頭のよさを漂わせる。他の女性はベールをまとい顔を隠している。まして写真を撮られるのも嫌いらしいがヌールは違った。カメラを向けても嫌がらない。パキスタンの女性では考えられないような明るさと親しみがあった。
やがて機関車も修理が完了、汽笛が鳴った。乗客は吸い込まれるように車内に戻った。ヌールはもっと話がしたいようだった。小わきにかかえていた本はなな、なんと英語版のロミオとジュリエットである。私はすっかり鉄橋を渡るSPSを撮るのを忘れていた。


世界の蒸気機関車
都築雅人の出会いとロマンの煙情日記
©2000-2008 TSUZUKI Masato