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■ルーマニアウクライナ国境に近いモルタビッタ森林鉄道での撮影中だった。小さな機関車は給水をするため水を求めて近くの川から水を吸い上げていた。機関士たちも昼の休憩に入っている。私もカメラを置き小さな村の露店で昼食をとることにした。店内にはほとんど食べる物が無い。空腹だったので仕方なくボロボロのビスケットと怪しいジュースを買ったがこれが全く美味しくない。この日も食事はダメかと諦めていた。いつものことである。店の女将は気の毒そうに私を見ていた。 |
モルタビッタ森林区 ロクサーナ(仮名) 14歳 学生 |
そこで娘のロクサーナを呼び何か食べものはないかと指示をだした。彼女は冷蔵庫から一塊の肉を出してきた。スライスした肉を食べろと私に差し出した。味もそっけもないハムである。塩がほしいほどだ。もっと食べろと切ってくれる。横で見ているロクサーナが微笑んでいる。 そして裏から黒パンも持ってきた。これは彼女のお昼かと思い断った。恐縮したがロクサーナのせっかくの好意に甘えた。こんなへき地にまして日本人が来ることすらめったにない。彼女らにとってはよほど嬉しかったのだろうか。 ロクサーナから手渡しされたハムとパサパサの黒パン、ほんの薄い塩けをあびほのぼのした味となっていた。これは私にとって忘れない昼食になった。 |
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©2000-2007 TSUZUKI Masato - Last Updated 2007-08-30